クリスマスのジョンホル。

星が零れ落ちてきそうな夜だった。

「クリスマスイヴなのに、こんなとこで何やってんだろう」

マルティネリは何度目かの溜息をついた。本当なら、いつもよりちょっと高いレストランに行って、彼女にプレゼントを渡し、街の光を眺めながらワインで乾杯するはずだ。あるいは、ピザとビールを買い込み、それぞれお気に入りのDVDを持ち寄って、家でのんびり映画を見るのもよい。少なくとも、こんな砂漠のど真ん中で、男3人とキャンプするよりよほどましだ。

「なんだ、不満かマルティネリ」

ビーマンが意地の悪い笑みを浮かべる。不機嫌な新入りを揶揄いたくて仕方がないという様子だ。

「そりゃあ、嫌ですよ。クリスマスですよ? 隊長だって家族と過ごしたいでしょう」

「家でだらだらするよりよっぽどいいな。それに上を見てみろ。イルミネーションみたいなもんだ。街のちかちかした灯りよりずっといい」

このワーカーホリックめ。マルティネリは心の中で悪態をついた。何がイルミネーションだ。大体、ビーマンに美しい星空を眺めるなんて情緒などあるはずがない。

「まあまあ、そうしょげるなって」

さすがにかわいそうになったのか、ジョンストンはマルティネリの肩を抱いて優しくそう言った。新入りはまだ若い。家族や恋人と過ごしたかったという気持ちは、痛いほどわかった。

「いい子にしてたらサンタが来てくれるかもしれないぜ?」

「餓鬼扱いはやめてください」

マルティネリはそんなジョンストンを冷たくあしらったが、その顔は先程よりいくぶんか柔らかい。

「サンタがいるなら、もっと休みが欲しいんですけど」

「おっ、新入りはサンタを信じていないのか」

「5歳のときに一晩中待ち伏せて、正体を暴いてやったんですよ」

スナイパーは忍耐力が必要となる。マルティネリのそういった素質は、幼い頃からすでに片鱗を覗かせていたらしい。

「ジョンストンは結構信じてそうですね」