髪の色が変わっていく叔父さんと、それが不思議な甥の話です。

栗色の髪に、小さな手がぺたぺたと触れる。マットはまだ柔らかく、力を入れれば潰れてしまいそうなその体に頬を寄せた。 「どうかしたか?」  彼の小さな甥は目を瞬かせ、首を傾げる。 「きらきらじゃない」 「うーん、そうだなあ。きらきらじゃないなあ」  抱き上げた体を優しく揺らし、マットは眉を下げる。金の髪は年を取るにつれて濃い色に変化していく傾向がある。久しぶりに会った叔父の髪が、輝く金色から深い栗色へ変わり、それが幼い甥には不思議でたまらないらしい。力加減を知らない彼は、肩まであるマットの髪を鷲掴み、下へ引っ張る。 「こらこら」  甥を諫めながら、マットの声は優しい。彼の甥はデヴィンと言い、彼の兄の息子だった。年が離れた兄だからか、甥にしては年齢がそう遠くない。そのため、マットはデヴィンをまるで弟のようにかわいがっていた。 「この髪嫌か?」  デヴィンは首を振った。彼の高い体温のせいで、マットはシャツの袖がじっとりと汗ばんでいくのを感じた。 「マット、早く来なさい。あんたの卒業祝いにみんな集まったんだから」  母の声が聞こえた。デヴィンを抱き上げたまま、マットはダイニングへ向かう。 「その髪は入隊前に切っておけ」  マットを見るなり、彼の父は不機嫌そうにそう言った。勿論そのつもりだが、長い髪をおもちゃに遊ぶ甥を見ていると、なんとなく惜しい気もしてしまうのだ。