ビーホル(なのかホルビーなのか)からのジョンホルジョンに嫉妬する隊長。 とはいえジョンホルジョン好きのビーホル好きが書いてます。
別れようと言い出したのはホールだったが、そう仕向けたのは自分だと、ビーマンは思っている。決してうまくいっていないわけではなかった。ビーマンは心からホールを愛していたし、相手もまた同じ気持ちだという自信があった。しかし互いの想いだけは、どうにもならないことが世の中にはいくつもある。 きっかけはビーマンの昇進だった。 規律の厳しいここでは、個人のプライベートや関係性でさえ、その対象となる。士官と兵士の恋愛など、許されるはずがない。事実、これまでもホールへの圧力はあった。これ以上彼を巻きこめないと、ビーマンは打開策を模索していたが、終わりはあっさりと訪れた。いつもの週末、行きつけのバーのカウンターで、ホールはまるで明日の天気を当てるような軽さで別れを切り出した。 「あんたは今の人生を捨てられないだろ? つまりそういうことだよ。それにこんな関係、どうせ長続きしなかったさ」 ビーマンもごく自然にそれを受け入れた。少しだけ、肩の荷が下りたような心地がしたことに罪悪感を感じながら。 それからホールは荒れに荒れた。毎日違う人間と一夜を共にし、体を重ねた。目の下にくっきりと隈を作ってくることも、一度や二度ではなかった。みな彼のうしろを指さしては口々にあることないこと噂し、嘲笑した。ビーマンに捨てられた青年はまだ未練があるらしい。見ろ、あの荒れようを。惚れたやつが悪かったのだ。 元恋人の身を案じつつ、ビーマンは心のどこかで安心していた。どれだけ体を許しても、ホールの心はまだ自分のもとにある。あれほどまでに乱れ、悶えるほど、彼はビーマンを想い続けているのだ。
笑い声のするほうへ目を向ければ、男がふたり、そこにいた。ここには似つかわしくないほどの明るさと軽やかさで、彼らはじゃれ合っている。纏わりついてくる男を邪険にせず、むしろ嬉しそうにホールは迎え入れた。 恋をしている目だと、ビーマンは思った。男は柔らかく輝く瞳でホールを見つめる。それはかつて、ホールがビーマンを見ていたときと同じものだった。彼が置いてきてしまったふたりの男と重なる。 ホールの心は自分のもとにあると、そう思っていた。それが永久に続くのだと、どこかでぼんやりと信じていた。 ホールもいつか見せるのだろうか。ビーマンしか知らなかったあの顔を。ビーマンしか知らない声で、ビーマンしか知らない話を、いやビーマンでさえ知らない秘密を、つい最近出会ったばかりの男に、聞かせてやるのだろうか。 ビーマンは生まれながらの軍人である。苛酷な任務の邪魔にならないよう、重荷になるものはすべて捨てた。個人の感情に振り回されず、禁欲的に、そうやって生きてきた。しかし今、胃から込み上げる鈍い熱を抑えることができない。 (さてどうしてくれようか)