夫夫なヴォルティリヴォル。クラウスくんもいます。 元ネタはしんちゃんのとあるエピソードから。めちゃくちゃかわいいお話なのでぜひ。

なんでも真面目に取り組むところが、夫の長所だと思っているが、さすがに今回はやり過ぎだと思う。

ヴォルフは大きく溜息をついた。ソファを陣取るティーリケは、今日も眉間に皺を寄せ、難しい顔で棒針を握っている。

「いい加減少し休めば?」

散乱する毛糸の玉は、すっかりクラウスの玩具になっている。ふわふわの毛糸で戯れる息子の姿は大変微笑ましいが、この状態がもう一週間続いていた。

クラウスの幼稚園でバザーを開催することになり、各家庭から一点、品物を持ち寄るようにと知らせを受けて以来、ティーリケは編み物の本と棒針に齧りついている。

「ベンのうちは手袋だって! エマのママはカーディガンを編んでるって言ってたよ」

「それでうちはマフラーか」

「他の家と被らないようにしないとな」

ティーリケは毎晩、帰宅後すぐに棒針を握り、食事も風呂も忘れて編み物に没頭している。元々あまり器用ではない彼は、かなり苦戦しているようだった。

代わってやろうかと、ヴォルフも一度は提案したが、すぐに却下された。彼の夫は負けず嫌いで、始めたことは何がなんでも最後までやり通そうとする。その頑固さは、無事に息子にも受け継がれている。

「明日も仕事だろ? もう寝たらどうだ」

「うん、もう少しだけ……」

ティーリケが編み物に追われ始めて以来、ふたりで分担していた家事は、もっぱらヴォルフが行っていた。何がバザーだ。こっちだって仕事があるのに、はた迷惑なイベントだ。

毛糸で遊ぶクラウスにもう寝る時間だぞと声をかけながら、ヴォルフは連続三日目となる夕食後の皿洗いに、再び溜息をついた。

毎晩悪戦苦闘しながらも編み続け、バザー前日の十日目、ようやくマフラーは完成した。

「……これ売るの?」

訝しげにえんじ色のマフラーを見つめるヴォルフを、ティーリケはじろりと睨んだ。

時間と労力をかけた割に、出来上がりはまずまず、いやそれ以下だった。ところどころよれているし、毛玉が浮き上がっている。横幅も均一ではなく、全体的にバランスが悪い。