ヴォルティリヴォルのスケートパロ。

1.

湧き上がる歓声と会場を揺らすほどの拍手。この瞬間がヴォルフは好きだ。何百時間とかけた練習も、軋む筋肉も、潰れた血豆も、すべてが報われる。

液晶画面に映された点数が、また会場を沸かせる。

「先輩!」

ヴォルフはこの世で最も尊敬する選手に駆け寄った。蒼い瞳が優しく細められる。

「見てました?」

「勿論」

クラウスの体をヴォルフは軽々と抱き上げた。嬉しくて、つい止められなかった。

「やりましたよ俺! 完璧だったでしょ!」

「わかった、わかったから下ろしてくれ……」

大きな犬のようにじゃれつくヴォルフは、何度もクラウスの頬にキスをする。

他の選手たちも、口々に祝福の言葉を投げる。彼らはライバルであり、志を共にする仲間だった。

今日は本当に素晴らし日だ。興奮冷めやらぬまま、ヴォルフは詰め寄る取材陣のもとへ向かう。

リビングへ通じる扉を開ける。ソファに座り、本を読んでいたティーリケは、ヴォルフをちらりと見上げた。

「夕食は」

「まだだ」

「冷蔵庫に残り物がある」

「了解」