もぐもぐする陸組。

SEALsの中で比べるならば、ビーマンは小柄なほうに分類される。ホールより頭ひとつ分ほど小さいその体は、しかし誰よりも高く飛び、誰よりも速く走り、そして誰よりもよく食べた。  今だって目の前に座る彼は、メインのチキンソテーをぺろりと平らげ、大量に盛りつけてもらった付け合わせのマッシュポテトをがつがつと口の中に入れていた。  好きな人が元気よく食べている姿は大変微笑ましいもので、ホールは目の前の男を飽きずに眺めていた。ビーマンの皿はみるみる空になっていく。 「ビリー」  ホールはまだ手をつけていない自分の皿を差し出した。 「これあげる」  ビーマンは皿をちらりと見て、それからにっこりと微笑むホールに視線を移した。 「それはお前の分だ。お前が食え」 「でもビリー、これだけじゃ足りないだろ?」 「いいから食え。なんでもかんでも人にあげようとするな」  ホールは黙って皿を自分の場所へ戻した。 「いつ何があるかわからないんだ。食えるときに食うことを覚えろ」 「……うん」 「うまいか?」 「うん」 「そうか」  ビーマンはなぜか自分が食べているときよりも嬉しそうな顔をしていた。その顔だけ、ホールは鮮明に覚えている。

訓練用に配給されたレーションをホールはぱきりと割った。 「それって隊長のですよね」 「そうだけど?」 「……いいんですか? 勝手に食べて」  目を丸くするマルティネリの横でホールはもぐもぐと口を動かす。 「あの人が教えてくれたんだよ。食えるときに食っとけって」 「はあ」 「お前も食う?」  差し出されたレーションをマルティネリは恐る恐る受け取った。 「バレたら殺されますね」 「大丈夫だって。それにあの人は俺が食ってると喜ぶからな」 「なんですか、それ」  主犯のホールと共犯に仕立て上げられたマルティネリに鉄拳が振り下ろされる、ほんの数分前の出来事である。