考えていないようでいろいろ考えちゃっている35歳組。直接的な表現はないけどleezello風味。
個人練習を終え撮影現場であるスタジオに戻ったとき、いつもとは違う雰囲気にラミは首を傾げた。
(あれ?)
撮影現場には生ける伝説、Queenのブライアンとロジャーが久し振りに顔を出していた。今は奥のほうで、グウィリムとベンに何やら語り聞かせている。演奏のアドバイスか、もしくは役作りに有用な話かもしれない。ふたりとも真剣に、特に若いベンは緊張した面持ちで耳を傾けている。
しかし、もうひとりの共演者の姿はそこにない。ラミの長年の友人。いつもなら彼の明るい声が聞こえてくるはずなのに。
ラミがぐるりと周りを見渡すと、4人から離れた場所に彼はいた。ベースを膝に乗せ、微調整を繰り返している。
「ジョー」
自分を呼ぶ声にジョーは顔を上げる。
「びっくりした……。いつの間に戻ったの?」
「さっき。ごめん、邪魔した?」
ジョーは首を振った。それを肯定的に受け取り、ラミも彼の隣に座る。この位置からだと4人の姿がよく見えた。
「みんなのところに行かないの?」
ラミが尋ねるとジョーは眉を少し下げた。
「折角ふたりが来てくれたのに、邪魔しちゃ悪いし」
そんなこと気にしなくていいのに、とラミは思う。
自由気ままに振る舞っているように見えて、ジョーは昔から周りへの配慮を忘れなかった。それは彼が長い芸歴の中で身につけた術である。現に、人好きで気配りを欠かさない彼は友人も多い。ラミだって何度も助けられた。
(でももう少し、我儘でいいと思うんだよね)
「だったら僕の話し相手になってよ」
そう言ってラミは悪戯っぽく微笑む。