ハンキラ飲食シリーズ。

SEALsの隊員として日々苛酷な訓練、任務に耐えるマルティネリだが、休日ぐらい年相応に楽しみたいと思っている。映画館で流行りの作品を観たり、カフェでのんびりと食事をしたり、とにかく折角の休みなのだから、ふたりで外に出て、休日にしかできないことをしたい。そう言うと、ビーマンは決まって「なんでわざわざ休みの日に、混んでるところへ行かなきゃならないんだ」と顔を顰める。  乗り気ではない相手をどうにか外へ連れ出し、最近テレビで取り上げられたばかりのコーヒーショップへ向かう。話題の店ということもあり、かなりの時間並んだが、その分コーヒーはおいしかった。  ビーマンもいつもの仏頂面でストローに口をつける。 「まあまあだな」 「その割に全部飲んでるじゃないですか」  ぶつぶつ文句を言う相手に笑いながら、マルティネリは最後の一口を飲み干した。

マルティネリは丁寧に銃器のチェックを行っていた。適当な仕事をしてはビーマンに怒鳴られるばかりか自分の、さらには仲間たちの命を危険にさらすことになる。  少し離れた場所では、ビーマンとホールがトラックから荷を降ろしていた。 「へえ、珍しいですね。隊長が並ぶなんて」  どうやら休みに何をしたのか話しているらしい。 「そういうの絶対嫌がりそうなのに」 「あいつがどうしてもって言うから」 「で、味はどうでした?」 「まあまあだな」  ホールは笑って、ふと首を傾げた。 「隊長ってコーヒー苦手じゃありませんでしたっけ?」  マルティネリは思わず手を止めた。そんなの、聞いたことがない。ビーマンは外に出たくないとか、混んでいるからいやだとか、面倒だと文句は言うが、嫌いだとか苦手だと言ったことは一度もなかった。 「まあ、たまにはな」  話を逸らすように、ビーマンは次々と荷を降ろしていく。 (もしかして、俺って結構愛されてる?)  より一層、銃器のチェックに集中しようとするが、にやけた顔を誤魔化せそうにない。  早く次の休みがこないだろうか。今度はビーマンがやりたいことをやろう。家でのんびり過ごすのもよい。  逸る心を抑えるように、マルティネリは銃器を持つ手に力を込めた。