ジョンホルジョンがご飯を食べているだけのお話です。
ジョンストンは食に関してこだわりが強い人間だった。自分で料理をするときはオーガニックの食材を選び、外で食べるときも魚介類ならこのお店、肉料理ならここと、行きつけの店を多く持っていた。 だから休日出かけるときは、決まってジョンストンに店選びを任せるのだ。
「うまい!」 目を輝かせ、ジョンストンはジェノベーゼを頬張る。やはりこの店にして正解だった。ここはパスタがおいしいと評判で、前々から気になっていたのだ。 おいしいものは好きなひとと食べるとなおおいしい。これが彼の持論である。だからこの店のパスタも、ホールと一緒に食べると決めていた。 「一口食ってみろよ、おいしいから」 こちらの返事も聞かぬうちに、ジョンストンはフォークを突き出す。一口にしては大きいその固まりをホールは苦笑いで受け取った。 「ん。うまい」 「だろ? そっちのもちょうだい」 相手が何か言う前に、ジョンストンはホールの皿のクリームソースパスタをごっそり自分の皿へ移した。 「うっま! やっぱり俺の目に狂いはなかったな」 やはりホールと来たのは正解だった。おいしいものは好きなひとと食べてこそ、さらにおいしくなるのだ。
ホールは食に関してこだわりがない人間だった。腹を満たせればそれでよい。食べられないものもない代わりに、特別好きな料理もなかった。 だから任務のために味気のない缶詰とレーションだけの生活になったとしても、全く問題はなかった。こんなもん食った気がしないとぶつぶつ文句を言うビーマンや、これじゃ足りないと溜息をつく若いマルティネリを横目に、ホールはスプーンで黙々と缶詰の豆を掬っていた。
「それ一口くれよ」 偵察任務から帰ってきたジョンストンはホールの隣に腰を下ろし、缶詰を指さした。 「同じもの配られただろ」 「もう食っちまった。一口でいいから」 これ以上騒がれても面倒なので、ホールは仕方なく大きく開いたジョンストンの口に缶詰の豆を流し込んでやる。 「うまい!」 たかだか缶詰に大げさなやつだと見ていると、ジョンストンは自分のポーチからクラッカーを取り出し、ホールの口元へ近づけた。 「やるよ、さっきのお礼」 屈託のない笑顔でジョンストンは言う。ホールはそれに齧りついた。 味のない、ぱさついたクラッカーなのに、なぜだろう。今日はいつもよりも滑らかな舌触りでホールを楽しませてくれる。