現パロクラニコ。
「あ!」
突然聞こえてきた声に、クラウスは驚いて振り向いた。声の主は隣で横になっていたニコライで、若木のようにしなやかな腕を伸ばし、クラウスの頭をがっちりと掴む。
「白髪だ……」
思わず言葉に詰まった。こういうとき、クラウスはニコライとの縮まらない距離をより一層感じる。
ニコライは若い。すらりとした手足は滑らかで、皺ひとつない。空の青と、若葉の緑を混ぜたような瞳は、未来への期待に満ちている。まだ幼さの残るその顔に口付けるたび、クラウスは胸が締め付けられるような思いがした。
ニコライはなおもクラウスの頭を鷲掴みにし、ぺたぺたと無遠慮に触れる。
「クラウスの白髪なんて初めて見た」
「染めているからな」
「なんで?」
「格好悪いじゃないか。だっていやだろ? 一緒に歩くと、年寄りみたいで」
ニコライは目をぱちくりとさせ、にいっと口の端を上げた。
「クラウスは本当に、俺が好きだな」
傲慢とも思える言葉も、彼が言うといやな気がしない。この青年の魅力がそうさせる。ひとに愛されるために生まれてきたような男だ。
それに、クラウスがニコライを愛しているということは、紛れもない事実だった。年若い青年の隣に立っても恥ずかしくないよう、身なりに気を遣うくらいには、彼を愛している。
「けどさ」
吐息がかかりそうなほどの距離に、ニコライの美しい顔がある。唇に柔らかいものが押し当てられた。
「俺も負けないくらい、クラウスが好き」
悪戯っぽく笑う青年が愛おしくて、細い体を抱きしめる。