エルグリの日常

耳をすますと、微かに覚えのある旋律が聞こえる。ガリンダがいつも歌っている歌のワンフレーズだ。ルームメイトの体にもすっかり馴染んでしまっているようで、そっとほくそ笑む。  まだ目は開けない。そろそろだろうか。三、二、一。靴が木の板を踏む固い音が聞こえる。ベッドがギジリと鳴って、温かい手がガリンダの肩に触れる。 「ガリンダ」  ガリンダは目を開けた。わざとらしくあくびをし、今起きたところだと暗に伝える。 「早く起きて。あなたは準備に時間がかかるんだから」 「んー……」  手を伸ばすと、優しいルームメイトは笑って起き上がるのを手伝ってくれる。彼女の匂い、森を流れる小川の、涼やかな香り。 「さあ、しゃんと立って」  ガリンダはようやくルームメイトの顔を見る。一日のいちばん始めに目にするのが大好きなひとだなんて、きっと私は世界一幸せな女の子だ、と思いながら。 「おはよう、エルフィー」 「おはよう、ねぼすけさん」