ステニコ/ニコステ要素あり。
彼は平均的に見てもかなり身長が高いほうだ。不本意ながら、その分足も長い。そして歩幅も広い。
こちらが速足で歩を進めなければ、すぐに置いていかれてしまう。
「この間先輩と出かけたときにさあ」
やっと追いついた。まったく、体が大きいのも困りものである。彼はのんびりと歩きながら喋り続ける。いい気なものだ。呼吸を整え、ようやく周りを見渡す余裕ができた。先程より、景色が緩やかに流れていく。
ああ、違う。追いついたんじゃない。彼がスピードを落としたのだ。だからこうして、並んで歩くことができた。
頬に熱が集中する。まったく。
彼のこういうところが。
ガサゴソと音がしたので起き上がると、隣で寝ていたはずのヴォルフが着替えていた。
「起こしたか?」
重い頭を横に振る。彼がベッドに腰掛けると、白いシーツが深く沈み込んだ。
「買い物行ってこようかと思って。卵なかっただろ? あとついでにちょっと歩いてくる」
「……一緒に行く」
「まだ寝てていいんだぞ?」
「いやだ、一緒に行く」
ヴォルフは笑って、それから体を抱き寄せると、勢いよくベッドに倒れ込んだ。
「じゃあ、もう一眠りしてから出かけようかな」